オープンは2022年2月。古い建物を生かしてリノベーションした店内には、ヴィンテージ家具、レコードとターンテーブル、アート作品、棚には色とりどりの食器たちが並びます。明るい挨拶と笑顔で迎えてくれるのは、焙煎士の店主・纐纈舞姫さん。パンクスタイルがお似合いのファーストインパクトは抜群で、真摯にコーヒーに向き合う姿や温かい接客に、たちまちファンになってしまう魅力の持ち主です。コーヒーのある暮らしの中で育った舞姫さんが焙煎に目覚めて、お店を出したいと考え始めたのは21歳のとき。「コーヒーって、レコードやタバコ、本などの好きなもののおともになるじゃないですか。その何かの引き立て役に人生を捧げて、職人仕事をするカッコいい焙煎士を私の周りでたくさん見てきました」と話します。湿度や温度で変化し、同じものが完璧に焼けないことに面白さを感じて焙煎するのは、純喫茶の王道の深煎りが中心。最近のカフェでは浅煎りが主流ですが、「日本の焙煎士が今まで築いてきた、深煎りじゃないと出せない味わいがこれからも残ってほしい」と願いを込め、自身が好きな苦味に包まれた甘みやとろみを追求しています。

そして、丁寧な手仕事で淹れるコーヒーだから、提供する食器にもこだわりを。オールドノリタケをはじめとするカップ＆ソーサーは、骨董好きなお祖母様から親子3代で蒐集してきたもので、定期的な入れ替えはお母様（カウンターの写真右）の担当です。「お店では良いカップで飲みたいし、毎回違うと楽しいですよね」と舞姫さん。その人の雰囲気に合わせながら、しっかり嗅ぐことで豊かな香りを感じられる豆には口の広いものを選ぶなど、カップの持ち味も見極めて、とっておきの一杯を届けてくれます。舞姫さん曰く、「焙煎士の人柄が豆にそのまま表れる」。一口目の印象から時間が経つごとに変化していく味は、知るほどに意外性や発見がある、まさにこのお店のよう。店主との会話や独特な空気感を含めて、その場でしかわからない、コーヒーの新しい楽しみ方を見つけました。

カウンターをメインに、テーブルが2卓。落ち着いた空間は、どの年齢でも一人でも気軽に入りやすく、ご年配の方から高校生まで幅広く来店します。常連さんの中には同業者も。「私もカウンターのあるお店が好きで、いろいろなところで知り合いができました。一人で盛り上がるより、名古屋が盛り上がっていかないとって思うんです」。舞姫さんを交えたカウンターで、世代を超えた交友関係も広がります。